示談はどれほど重要なのか-窃盗事件の起訴と不起訴
窃盗とは、他人のものを盗むことです。
他人のものを盗んで逮捕された場合、罪状は刑法第235条の「窃盗罪」にあたり、10年以下の懲役または50万円以下の罰金に処されます。
(なお、2025年6月1日からは懲役と禁固が一本化され拘禁刑となります。)
一方、被害者との「示談」を成立させることで、刑事事件における処罰が軽減されたり、場合によっては免れたりする場合もあります。
この記事では窃盗で逮捕された場合の
- ・刑事事件の流れ
- ・示談と「起訴・不起訴」の関係
などについて解説します。
1 窃盗を含む刑事事件の流れ
事件の内容によって少し異なる場合もありますが、逮捕されてからの流れは一般的に以下のとおりです。
- ①逮捕
- ②警察での取り調べ(最大48時間)
- ③検察での取り調べ(最大24時間)
- ④勾留(最大20日)
- ⑤起訴の有無の決定
- ⑥(起訴された場合)刑事裁判
2 「起訴」と「不起訴」
警察や検察での取り調べが終わったあと、検察はその被疑者について刑事裁判を行うかどうかを検討します。
刑事裁判を行う場合は「起訴」となり、行う必要はない、と判断した場合は「不起訴」となります。
「起訴」と「不起訴」の大きな違いは「前科が付くかどうか」です。
一旦起訴されてしまうと裁判になり、裁判で「無罪」とならない限り、前科がつきます。
勤務先の就業規則によっては前科がつくと解雇されてしまう可能性があります。
また、それ以外でも生活に不都合が生じることもあるかもしれません。
刑事裁判で「無罪」となることは非常にまれで、ほとんどないと言っても過言ではないでしょう。
つまり、被疑者がその後の生活を問題なく送るためには、裁判にならないようにする=「不起訴」という判断をしてもらえるようにすることが何よりも重要です。
窃盗の場合、不起訴に持ち込むために必要不可欠なのは被害者との「示談」です。
示談を成立させると不起訴になる確率はぐっと高まります。
3 窃盗事件における「示談」とは
⑴ 示談はあくまでも「当事者同士」の話
「示談」とは、「争いごとについて当事者間で話し合って解決すること」という意味です。
「示談」に関しては警察や検察が間に入ったりすることはありません。
⑵ 窃盗の示談について具体的にやること
示談を成立させるまでのおおまかな流れは下記のとおりです。
- ・相手とコンタクトを取る
- ・被害額や慰謝料等を話し合いの上決める(被害感情が大きいと慰謝料を多く請求されることもある)
- ・示談書を作成する
- ・被疑者側は指定された金額を支払う
- ・示談書や領収証の写しを検察に提出する(被疑者と被害者の間で示談が成立し、支払いも終わっているという旨を検察に伝えるため)
⑶ 窃盗は「示談」が処分を大きく左右する
窃盗事件だけでなく刑事事件全般にいえることですが、「被疑者と被害者との間で示談が成立しているかどうか」が被疑者の処分に大きく関わってきます。
特に、被害金額がそこまで大きくない軽微な窃盗事件の場合、「示談が成立し、被害弁償や慰謝料の支払いも済んでいる」という状態であれば、不起訴になることのほうが多いでしょう。
また、「示談」という形でまとまっていなくても、「被害分の支払いだけは済ませておく」という形をとることもでき、その場合も被疑者に有利になることが多いようです。
なお、
- ・被害金額が大きい
- ・窃盗の内容が悪質である(空き巣・ひったくりなど)
などの場合、示談が成立していても起訴されることがあります。
4 弁護士なしでの「示談交渉」は難しい
1の「刑事事件の流れ」で説明したように、刑事事件はスケジュールが通常の民事事件よりもタイトで、逮捕から3週間程度で処分が決まってしまいます。
窃盗事件を不起訴に持ち込むには、勾留期限までに
- ・被害者と冷静に交渉を行う
- ・法律的に不備のない示談書を交わす
- ・支払いを済ませる
- ・示談の証拠書類を検察に提出する
などの行動を迅速に行う必要がありますが、法律についてあまり詳しくない人が被害者との間で「素早く」「不備なく」示談を終えるのは非常に難しいことです。
5 窃盗で逮捕された際に弁護士へ依頼するメリット
そんなときに頼るべきはやはり、法律の専門家である弁護士でしょう。
窃盗などの刑事事件を弁護士に依頼すると、以下のようなメリットがあります。
⑴ 接見に制限がない
逮捕から3日間は家族でさえ被疑者に面会することはできません。
また、3日経った後でも土日祝日は面会できません。
さらに、面会可能な日であっても、面会時間は15分程度に限られています。
しかし、弁護士ならいつでも自由に被疑者と接見することができます。
時間の制限もありません。
できるだけ早期に逮捕に至った事情を聞いたり、今後の見通しについて話をしたりしたい場合、弁護士への依頼を検討した方がいいでしょう。
⑵ 示談交渉を任せられる
「被疑者やその家族などとは話したくもない」と思っている被害者でも、「弁護士となら話してもいい」と譲歩してくれることがあります。
刑事事件における被害者との示談の経験が多くある弁護士なら、被害者の感情を尊重しつつ、全力で交渉を行うことが可能です。
また、示談が成立した場合、弁護士であれば法律的に不備のない示談書を作成することができます。
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